先日観た音楽劇『ブンとフン』が想像以上に面白かったのです。
となると、気になる原作の『ブンとフン』
この奇想天外なストーリーは、どこからどこまで原作の展開なのか?
図書館へ探しにいくと味ある本に出会えました。
原作と音楽劇を比較して読んでみたので感想を記します。
小説『ブンとフン』とは
井上ひさしさんの小説家としてのデビュー作で1970年に出版された。
あらすじ
フンは小さなアパートに住む売れない小説家。
とある日、彼の書いた小説「ブン」が電子書籍で出版され、突発的にヒット。
その主人公ブンを「どんなことも可能にする泥棒」として描いてしまったため、ブンは電子書籍のデータの中から飛び出て世界中のありとあらゆるものを「盗み」始める。
原作を読んだ感想
原作でもフン先生は小説「ブン」を読み返しながら歌っていた。
早速、歌うのは原作通りだったとは・・・
そして、はじめのブンは男って雰囲気が強い。
一日で起こる奇妙な事件の部分、朗読劇では挙げられなかった事件もたくさんあって目撃した人の状況も含めて詳しく書かれていて事件の内容が面白い。
好きだったシマウマのシマがなくなる事件も面白く描かれてる。
警察官の歌う常識の歌は「犯人さがしの推理力を養うための論理ソング」という長い題名の歌として登場してる!!
歌が登場する場面や歌詞はちょっと違うみたいだけど、警察長官は原作でも常識常識うるさかった。
第四章のタイトルは『モノからココロへ』
ここで上流階級の奥様方も登場する。
ご婦人として書かれているけど本当に歌ってる!
「サイザーンス、サイザンス♪」
「ルネッサンスにサイエンス♪」
「教養高きホモサピエンス♪」
ここからブンが虚栄を盗む展開も同じだ。
この段階で違うのは、形のないものを盗もうとするブンが盗むのは「人間の歴史」と言ってる。
以下、引用
人間に歴史があっても仕方がない。
歴史から学んでいるなら、同じ失敗は繰り返さないはず。
ところがしょうもなく戦争を繰り返してる。
人間に歴史は宝の持ち腐れ。
原作でも人間の醜さをこんな風に書くのか。刺さる。
そしてブンは、フン先生の歴史を盗み、フン先生には幼稚園時代の記憶だけが残るという音楽劇ではなかった面白い展開になる。
警察長官が悪魔でも使え!と言わる展開も原作通り。
でも、悪魔を呼び出すのは呼び屋とよばれる人だった。
悪魔が登場し、音楽劇でも印象的だった悪魔がピストルを貸りる場面。
悪魔悪魔した武器はないのか?言われて
「武器は人間の方が進歩してますの。人間の知恵と努力にはいつも学ばされますわ」
音楽劇とは違った言い方だけど、原作でも皮肉で響く言い方で書かれている。
そして原作の悪魔さんもちゃんと歌ってる!
「最後に地球は焼け野原♪」
「ドカドン!ドカドン!」
「悪魔の夢のユートピア♪」
再びフン先生の前に現れたブンは、フン先生に歴史を返す。
ブンの盗むものが人の心に手をのばすようになったと気づくフン先生。
ここで、人間の一番大切にしている権威を盗むという話になる。
けど、ここで原作のブンは権威の歌を歌わないのか。
2人でいい雰囲気になってはないけど、悪魔がブンとブンの前に現れ、ピストルを撃つ場面に。
そして、音楽劇と同様に悪魔を撤退させる。
悪魔が撤退すると、やはりフン先生のデレがきた!
ざわざわしたこの場面は、原作通りの展開だったのか。
以下、引用
フン先生「どうやら私は君が好きになったらしい」
ブン「どうしてわたしを?」
答えるかわりにこんな唄をうたった。
「ただ好きなのさ♪」
「ただそれだけのことなのさ♪」
ブンがあとをつづけた。
ブンとフン先生の二重唱、ぐーっと盛り上がる”
と書いてあった。
まじか、原作通りだったのかこの場面!!!!
しかし、ここから全く違う話が書かれていた。
「続・ブン」という題名で小説を盗作させ、偽ブンが現れる。
偽ブンによって牢獄に入れられるフン先生。
というこれまたややこしい展開だった。
そして、音楽劇でもあった12万人のブンが集結。
原作では、オリジナルブン、若いブン、偽ブンやらがわちゃわちゃして、ブンも捕まる展開へ。
そして胸糞悪かった裁判所の場面は原作そのままだった。
しかーし!!裁判所以降の展開が全く違う!!
第九章「刑務所へ行こう」
タイトルからしてなんだそれ!?
フン先生は牢獄にいないじゃないか!
刑務所に入ってるのはブンじゃないか!
さらにさらに・・・
ブンは網走刑務所から湘南刑務所に移るとな!
そのブンにフン先生が面会にくるとな!
その刑務所は高級住宅地といった感じの居心地よさそうな刑務所とな!
あの警察長官は刑務所の所長をしてるとな!
ホテル顔負けの刑務所を作ったのは12万人のブンをできるだけ長生きさせるためとな!
なんだこの面白い展開は!!
看守長も囚人としてこの刑務所に入れてほしいと言うている!
さらにテレビを見ると
「ブンにならって盗みましょう♪」
「刑務所よいとこ天国だよ♪」
と、皆が刑務所に入りたがりひとりのこらず盗みはじめているとな!!
つらい浮世で苦労するより、ブンにあやかってホテルより暮らしのいい刑務所に入ろうとしているとな!
これがブンたちの狙いだったとな!!
そしてテレビに映る人々がみんなで歌う。
「悲しむ人からその悲しみを♪」
「すべての権威からその権威を♪」
「そしたらみんなただの人間になるはずだ♪」
「ただのすばらしい人間に♪」
音楽劇では、権威を盗むと方針を変えたブンが歌った歌に似たフレーズだ。
そして最後には
「みんなで仲良く盗みましょうよ」
「ブンにならって盗みましょう!」
これで原作は終わった。
なんだこの最高な終わり方!!!
音楽劇とは全く違う終わり方!!
音楽劇では、現在の社会情勢を踏まえた展開だった。
そして、幸せを感じることができない終わりだった。
音楽劇があのラストだったのにも意味はあるし、あの橋本さんのお芝居を見れて良かったと思ってる。
ただ、原作を読んで良かった。
そして原作にはいない音楽劇ならではのナレーター役
音楽劇においては本当に重要で、原作と違う展開だったんだと知れて嬉しい。
ただのナレーターにしない世界観がほんと好きだったから。
原作はいかにもミュージカルにしてください!といった内容で、音楽劇も原作も想像以上だった。
原作からやっぱり面白い!
音楽劇の『ブンとフン』も小説の『ブンとフン』に出会て感謝。
再演希望!以上!!